語句説明・資料

からくり浄瑠璃

知立祭りの山車は、からくりのメッカ愛知県でも珍しいもので、三台の山車で文楽、一台でからくり浄瑠璃が演じられています。江戸期には、上段でからくり、下段で人形浄瑠璃という二種の催し物が四台それそれの山車で演じられていました。
お祭りは、愛知県知立市の知立神社の祭礼で、平成24年の本祭は5月3日。町名演目などは次の通りです。

西町  上段でからくり浄瑠璃 「一ノ谷合戦」
     (平成22年より「平治合戦」が復活)
中新町 前棚で文楽 「鎌倉三代記」
山町  前棚で文楽 「伊達娘恋緋鹿子」
本町  前棚で文楽 「傾城阿波鳴戸」
宝町  前棚で文楽「壷坂観音霊験記」

知立祭 西町 からくり浄瑠璃 一の谷合戦 山車の上で演じられる人形浄瑠璃

知多地方にはこのような浄瑠璃を演じる山車祭りが存在します。

知多市 岡田神明社祭礼

里組  上段でからくり浄瑠璃「悪源太平治合戦」
(糸からくり人形芝居「悪源太平治合戦」は平清盛や牛若丸など五体の人形で演じられる。)
     下段で三人遣い操り人形 「三番叟」「三杜女」

知多郡美浜町上野間 野間神社祭礼

越智嶋組 からくり浄瑠璃「田邨川神亀釣竿・源義経日之出車・源氏烏帽子之段」。
四嶋組  からくり浄瑠璃「楓狩妹背御鏡山賊退治之段」

常滑市坂井 坂井祭 松尾神社祭

からくり浄瑠璃「軍術誉白旗鬼一方眼館之段」

南知多町

内海  「業平八幡山の段」(昭和30年代に途絶える)
山海  「小烏丸夢助太刀」(昭和30年代に途絶える)

半田市、常滑市

前棚 三人遣い「三番叟」(文楽とは異なり、人形だけを幕のれんの前に出し、人は身を隠して、頭と胴・両手・両足を三人が分担して遣うという独特のもの)

「三河は、浄瑠璃の始まりともいうべき浄瑠璃姫の伝説発祥の地。語りの伝統もあり浄瑠璃への関心もあったものと思われる。現に、豊橋市には吉田文楽が残っている。また、三河は地芝居の盛んな所である。からくりより演劇への興味の方が高かったのであろう。尾張に近く、いかも東海道の宿場であった知立で、尾張の山車からくりの伝統と三河の演劇への興味が出会って、からくり浄瑠璃と山車の上での人形浄瑠璃がうまれ、これが知多へ伝わっていったと見るのはうがち過ぎであろうか。」(『It'sA(イッツエイ)』第4号 1994年 33ページ「あいち絵草子 曳いて、廻して、また弾いて」安田文吉)